作業療法士
田上純一さん
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現在のお仕事について簡単にお教えください
障がいを持つ人々の就労支援として共に農業・漁業に従事
正光会への入職は2010年です。ちょうど団体が病棟をなくそうとしている過渡期の頃に携わり始めた形ですね。元々出身は福岡でそのまま地元の作業療法士の養成校へ通っていたんですが、当時の授業で「地域医療で面白い取り組みをしている場所がある」という話から、現在の愛南御荘地区のことを知りました。当時九州の精神医療の在り方はまだ旧態依然としていて、自分の理想とは少し違っていた部分もありまして。卒業と同時に思いきって、作業療法士として働くことに大きな魅力を感じたこの地へとやってきたんです。普段の業務は就労移行支援事業所のスタッフとして、障がいを持った方と一緒にお仕事をしています。農業や魚の養殖といった職種・業種での就労支援を主に行っているので、ぱっと見は作業療法士に見えないとよく言われますね(笑)
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仕事で大切にしていること
作業療法の本質を通し障がい者が普通に生きるための支援を
作業療法士という職業ですが、僕は福祉がやりたいわけではなくて。一番はこの町で、障がいを持つ方が普通に生きるための仕事をしたいんです。なので患者さんとも、医療人と患者というより同じ仕事で働く仲間の意識が強いかもしれませんね。元々、作業療法は本来患者さんの生活に即したものであるべきで、かつ障がいを持つ方も普通の人と同じように働けると僕は昔から思っていて。よく例えるのは、現代だと視力が悪い人も矯正器具を使って普通に暮らせますよね。けれど器具がなければ、その人たちも目の見えない視覚障がい者になる。なので障がいと健常って本当に紙一重で、時代環境で境目も曖昧になるものなんです。なので精神障がいを持つ人も過剰に扱わず、ただの町の一住人として扱うここの地域医療の価値観がとても肌に合ったんだと思います。
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今後のビジョンをお教えください
就労移行支援事業所はゴールでなく、あくまで患者の通過点として
僕個人というよりは地域医療全体の話になるんですが、この就労移行支援事業所という場所はあくまで通過点になっていくべきだと思っていて。ここで働くことが最終目標ではなく、ここで力をつけて次のステップへ進む人たちが出て来て欲しいと感じているんです。事業所で働く方の中で、ステップアップしたい、新しい仕事に挑戦したいという人が増えてくれるといいなと思いますし、もしそういう方が現れた時は僕たちも全力で応援したいですね。最終的には精神障がいを持つ方が、僕たちのような支援団体の存在なしで普通に生活できる社会になることが一番理想だと思っているので。そういった社会づくりのために従来の精神医療が持つイメージから、この愛南御荘地区のようなやり方もあるということをどんどん多くの人に伝えていきたいですね。